世間では、2018年は、「副業解禁元年だ」と言われていました。実際のところ、副業をとりまく環境に変化はあったのでしょうか?
まだまだ、「本当に始めちゃっていいの?」と思っている人もいるでしょう。
ここでは、企業における副業の現状を見ていきたいと思います。
政府が盛んに言った「副業解禁」とは?
政府は、2018年「兼業副業解禁方針」を取ることとなりました。具体的には、厚生労働省が作っている「モデル就業規則」なるものがあり、この中にあった副業禁止を明示した部分を、条件付きで副業を認めるもにに変えたということです。
モデル就業規則は、多くの企業が参照しているものと言われ、これから就業規則を作成したり、見直したりする企業に影響を与えると言われています。
具体的に見てきましょう。
(遵守事項)
第11条 労働者は、以下の事項を守らなければならない。
(中略)
⑥ 許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。引用元:厚生労働省・旧モデル就業規則
また、これを破った場合には、懲戒などの罰を与えることができるとなっていました。
(懲戒の事由)第62条⑦第11条、第13条、第14条に違反したとき。
引用元:厚生労働省・旧モデル就業規則
懲戒とは具体的に言えば、減給や降格などを指しています。簡単に言ってしまえば、
「副業を無断でやってバレたら、給料を減らすからな!」
と言っているわけです。
これが、企業の副業禁止に大きく影響していたと政府は言っているわけです。そして、2018年3月28日の働き方改革実現会議決定により「働き方改革実行計画」が決定。モデル就業規則の中から、上記の11条⑥が削除され、以下が新設されました。
(副業・兼業)
第67条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事すること
ができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の
届出を行うものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場
合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合引用元:厚生労働省・モデル就業規則
これにより、国が副業・兼業を推進していることとなりました。
現実的に副業をするには、まだ壁がある
ところが、モデル就業規則が変更されたからと言って、すぐにサラリーマンが副業・兼業ができるわけではありません。なぜなら、実際に私たちが働く企業には、その企業の就業規則があり、それを遵守することが必須となっているからです。つまり、モデル就業規則が変わったところで、イコール副業が認められた!とはならないのです。
私の個人的イメージとしては、副業を認めてもらうために裁判を起こした場合、認められる可能性が高くなったな・・・くらいの感覚です。
さらに言えば、2017年12月にあった経団連の榊原会長の定例会見では、以下のような意見が述べられました。
副業兼業について各社の判断でやるのは自由だ。いろいろな課題があるので、経団連としては、旗振り役をする立場にない。
これを見る限り、政府が決めたからといって企業が副業 OK となるには少し距離があると考える必要があるのかもしれません。
これら副業に関する情報を詳しく知りたい人は、以下を参照してみてください。
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192844.pdf
実際には、副業を禁止している会社が約8割!
実際の副業・兼業状況はどうなのでしょうか?
2017年の調査では、リクルートキャリアが発表した「兼業副業に対する企業の意識調査」が参考になるでしょう。
これによれば、
副業兼業をように推進している会社 22.9%(うち0.3%は推進している)
禁止している会社 77.2%
となっています。
副業を禁止している理由は、
従業員の長時間労働過重労働を助長する 55.7%
情報漏えいのリスク 24.4%
労働時間の管理把握が困難なため 19.3%
ごもっとも・・・という感じですね。
ちなみに、推進派の理由ですが、こちらは、「特に禁止する理由がない」というのが圧倒的に多く68.7%でした。
その後、2020年になり、労災の環境などに変化があるようです。多少は副業を認める企業は増えましたが、まだまだ公言できるようになったとは言えないことに変わりはありません。
ミドルエイジには厳しすぎる内容
この企業の姿勢、これからさまざまなことを学び、スキルアップをしていってほしい若い世代も含めたものであることを考慮しなければなりません。実際、40代、50代の人には、この企業側の考えを押しつけるには若干無理があります。
例えば、役職定年制度の導入がそうでしょう。
平成21年に厚労省行った「従業員1000人以上、資本金5億円以上を対象にした調査」では 役職定年があると回答した企業が48%にも上っていました。その後、さらに浸透しており、今は従業員数が100人程度の会社でも導入するところが増えてきています。
詳細については、「役職定年が引き起こす悲劇を具体的に考えてみた」でも書いていますが、役職定年になると、55歳~57歳ぐらいで部長や課長といった役職が解かれます。それに伴い役職手当がなくなり、8割以上の人が給料の減額にあえいでいます。
55歳といえば、まだ子供にお金がかかるという家庭も多く、このタイミングで給料が減ることに抵抗感があることが多いでしょう。とはいえ、「今さら独立もない」と考えるのは当然のこと。企業としても知見のある人が退職するのは望んでいないはずです。その観点から言えば、「給料は減るけど、副職は禁止」というのは矛盾しかないことになります。
そこで、私は思うのです。
「副業禁止が基本姿勢でも、許可を出せばやってよい。そして、50歳以上は基本的に認める」となるのではないかと。これしか、労働者と企業がwin-winになる方法はありません。
現状は「バレないように副業をやる」が正しい選択肢
とはいえ、禁止されているものを堂々とやるわけにはいきません。最悪の場合、減給などということもあり、あまりにリスキーです。
企業としても、「役職定年を迎えた人だけ副業OK」を制度かするわけにもいかず、結局「全員禁止」を表面上だけでも見せる必要があるでしょう。
そこで、副業が禁止されている人は、まずはこっそりとバレないようにやるということが基本になってきます。自分の身や家族の幸せは、自分で守らなければなりません。内緒にやって、いつか就業規則が変更される人を待ちましょう。